俳優の仕事って魅力的ですね~ 人に感動を与える仕事って凄いなぁと思います。
個人的には容姿がカッコいいだけのスターよりは、ロバート・デ・ニーロみたいな超演技派の俳優が好きですね。
どうも、ナカジです。今回は人間心理に基づく俳優の演技力について書いていこうと思います。
映画や舞台などバーチャルな世界で、いかに臨場感が溢れるリアリズムを追求していけるかというナーバスな感じを受けますが、名優と呼ばれる役者たちは どのようにして人の感情を揺さぶるような演技力を身につけていくのか…
その秘訣を解き明かしていこうと思います。
数学や物理、スポーツなど、どの分野にも先人達が作り上げた理論というものがあると思いますが、この演劇界にも ずぅ~と昔から提唱されている演劇理論があるのです。
それがスタニスラフスキー理論です。
目次
スタニスラフスキー理論とは
リアルな演劇を本格的にするため、ロシアの演出家であり俳優のコンスタンチン・スタニスラフスキーが100年も前に提唱した演劇理論で、今もなお継承され演劇人に多大な影響を与えています。
しかし、ロシアの人の名前って 長~いですね。忘れちゃいますよー
その長~い名前の人が作った理論を簡潔に言うと、人間の精神、感情といったところにフォーカスし、よりリアルで自然な演技、具体的な表現をできるようにしていくといったとこでししょうか。
1940年代にはアメリカに渡りニューヨークの演劇で体系化され古くはマリリン・モンローやジェームス・ディーン、60年代からはダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ、メリルストリープなど数多くのハリウッド俳優たちのメソッドとして確立されました。
どの俳優も演技派のそうそうたる名前ばかりなのが、この理論の信憑性を伺うことかできると思います。
この、人の心理面に働きかける演技法ということでフロイト心理学との関連があるといわれています。「 無意識の哲学 」といわれる心理と共通する 感情を動かす演技とはどのようなものなのでしょうか。
メソッド演技法
演じる役の内面を重要視して、本当の心理的感情を生むことでセリフを生きたものにする演技法をメソッド演技法といいます。演技というより「 その役を生きる 」といった感じですね。
外観だけではわからない気持ちの動きを表現していくのですから、精神を高揚する状態を自ら作って本当のストーリーに入っていかなければなりません。
そのためには、役のキャラクターの人格を深層心理レベルまで掘り下げて、その役に「 なりきった状態 」に自分をもっていく必要があります。
でも、どうやったら他人の気持ちになりきれるのか?
感情移入させる大事なポイントは質問と共有です。
その人物の過去にはどんなことがあったのか?その行動に駆り立てるものは何なのか?といったような前提状況を質問し想像していきます。
その行動の動機がわかってくれば本気回路を生み出していけます。
そして「 役 」と「 自分 」を重ね合わせるには、同じ体験をして感情を共有するのが1番の近道だということで欠かせないのが 「 役作り 」 なんですね。
この感情を頭で作らず、自分自身で手に入れたものから作りあげていくのが最強です。
メソッド演技派俳優の「 役作り 」は皆、凄まじいですが、その中でも驚異的な執念を感じるのが ロバート・デ・ニーロです。
デ・ニーロ アプローチ
単にゼスチャーや物まねじゃなく、その役自体になりきるために壮絶な「 役作り 」を実行していたことからデ・ニーロアプローチと呼ばれるようになりました。
デ・ニーロの役作りは、その感情だけでなく顔や体形までも似せて『 感情はアクションから生まれる 』ということを体現しました。
そのエピソードの数々は壮絶です。例えば映画『 タクシードライバー 』ではタクシードライバーをやりながら精神が崩壊していく青年の役に徹するため実際にタクシーの運転手をやりました。
『 アンタッチャブル 』ではアル・カポネ役をやりましたが容姿を似させるため前髪を毛根から抜きました。食事会で裏切った仲間を後ろからバットで撲殺するシーンは狂気を感じました。
狂気といえば弁護士に対する復讐鬼を演じた『 ケープ・フェアー 』で見せたどこまでも追いかけてくる狂気は恐怖でした。こういうしつこい狂気を演じる役をやらせたらデ・ニーロの右にでるものはいないと思います。
この時も悪役を演じるためグリグリの身体に鍛え上げ、前歯を汚しています。
極めつけは実在したボクサーを描いた『レイジング・ブル 』という映画で現役のミドル級ボクサーの身体と引退後の太った身体を作り上げました。
その差なんと27㎏!肉体改造と増量をやり遂げました。引退後の太ったシーンを見た時はデ・ニーロだとまったくわからないほどでした。Σ(゚Д゚)
ここまで身を挺して役になりきるメソッド演技が、スタニスラフスキー理論の真骨頂なんですね。こういったことを100年前に取り入れていったのは画期的だと感じます。
日本でも三國連太郎や松田優作など演技派の俳優は、役に近づけるため歯を何本も抜いて頬をこけさせたなどやっています。
やー役者魂って凄いですね!。。
スタニスラフスキー理論 総評
見ている人に強烈なインパクトを伝える技術というのは、細かい1つ1つの理論の積み重ねから生まれます。
例えば、感情を表すときには瞬きをしない。感情を込めているときに瞬きをしてしまうと衝撃が半減してしまう。それほど目は口程に物を言う、目で演技しろ! とか
動作の後にセリフを言う方が、その言葉が強調される。「 出ていけ!」と言うだけよりドアの方を指さして「 出ていけ!」と言った方がリアル感があります。
といったセリフ以外の視線、しぐさ、声のトーンなどを訓練をして真実に近づけていくんですね。そのために1番重要な感情の部分にフォーカスした演劇理論だと感じます。
臨場感を感じれば、人はそのストーリーに没頭していきます。
デ・ニーロのベトナム戦争を描いた『 ディア・ハンター 』を観たときには戦争というのは人間がこんなに非道になってしまうのかと感じました。
ベトコンが捕虜となった米兵に回転銃に1発弾丸を込めてロシアンルーレットで賭け事をやるのです…このシーンで、デ・ニーロ筆頭に他の俳優達の臨場感が半端じゃなく、自分がその場にいたらどんな恐怖か、人間の運命とは何なんだろうか と考えてしまい涙が溢れて止まりませんでした。
人の感情に訴える演技の要諦は準備と訓練の賜物です。
何の分野でもそうですが、いいパフォーマンスを発揮するには、正しい理論と徹底した準備が必要不可欠ですね。
そのためには、小手先の表面を見繕うだけの演技ではなく、その役の人物が感じるであろう感情や生まれてくるであろう感覚を体験させ、本能が巻き込まれていくような結果を求めていくということですね。
何事も原因があって結果がある。ならばその結果を生みだした原因にアプローチして自然に生まれてくるものが俳優の力になっていくというのが、この理論の根底だと感じます。
ここでスタニスラフスキーの孫弟子、田中徹さんの講義でリンゴの実で分かりやすい例えがありますので紹介します。
望まれているリンゴ… 赤くて甘くて栄養満点のリンゴの実。さてこのようなリンゴをどのようにしてリンゴの木に実らせていくのでしょうか?
手っ取り早くやれば赤色は人工着色料、甘味は人工甘味料、栄養は肥料やドーピング…でその場は補えますね。でも何か違う…確かに青いリンゴはたちまち赤くて大きなリンゴに育ちます
さて、このリンゴ 私たちが望んでいる、目指しているリンゴなのでしょうか?
安いし美味しい しばらくの間はそれでごまかせるかもしれません。でも…何か違うんですよね。
本物…これを目指すには リンゴ自体の生命力に目を向けようということなんです。
では、本物を目指すためにしなければならなかったこと、とはいったい何だったのだでしょうか?
まず土壌…土から栄養をもらうんです。必要最低限の肥料は必要かもしれません。
有機的な存在ですからね、日光は?光合成をするのには必要不可欠です。光の当て方、大事です。あと水!調整具合が響きます。これらの自然的要素が嚙み合ってデカくなっていくんですねー。
役者やスポーツ選手、パフォーマンスする人達は、幕が開いたらやらなければいけないんです、でも直接結果に手を加えるのではなく、それを作っている原因にアプローチしていこうということなんです。
リンゴを作っているのは自分なのでしょうか?やらなければいけないと思っているのはその感情を表現することなのでしょうか?
違います、作っているのは自然です。できるのは、その自然にアプローチしていくことだけです。結果に着目してはいけません、その結果を生み出す原因にアプローチして生まれてくるものに着目して本物を目指そうという根源なんですね。
やってみて結果をみる、足りなければ自然に立ち返って補っていく。そのプロセスの中で自分の中から役が生まれてくるのを吸収していく。これが力なんだと。
有機的に生まれ変わっていくプロセス・・・ 深いです。
役者は役を生きていますが、我々は自分の思い描いたなりたい自分に向けて応用できますよね、やってみましょうか!そのようになっていく感じがします。((´∀`))
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