今のスポーツ界では、色々な器具やマシンを使った合理的な科学的トレーニングが主流になっています。その成果は目覚ましく スポーツ界全体のレベルアップに繋がっています。
あらゆることがすべて進歩し恵まれている裏で、失われているものもあるのではないかという思いもあり、先人の鍛錬方法というものを振り返ってみたいと思いました。
そこで今回は、肉体改造というテーマで原点にかえり、自力本願的な鍛錬方法に焦点を当てて書いていきます。
モデルとなるのはフルコンタクト空手の神髄、故 大山倍達 極真空手総裁です。
まさに日本空手界の親であり、その戦歴はあらゆる異種格闘技に打ち勝ち更には猛牛とも戦いゴットハンドの異名をとった人物です。
その半生はマンガ空手バカ一代の主人公にもなりました。ということで小中学生の頃、胸躍らせて読んでいたナカジです。
こういった武道の達人は、どういった考えで強靭な肉体を作り上げていったのか?そのスケールの大きさを感じながら検証していきます。
目次
自力本願的な鍛錬をせよ!
基本的には武道は、他力本願ではなく、自力本願の稽古で強くなるものだ。
ボディビルの器具や色々なマシンを使ってやるのは、筋骨隆々にはなるけれども悪い面もあるダダ単に筋肉美を作るために稽古しているのではない。それよりも空手に必要な筋肉を作ることが先決だ ということです。
筋骨が発達していることと、強さとは直接関係はない、と 。やはり強さを第一に求める武道ならではの考え方ですね。
そういうことで、稽古はもっと原点にもどらなくてはいけない。
牛を倒せる拳をつくるには、マシンによるトレーニングではない。拳立て、逆立ちをやる。拳でできたら五本の指でやる。さらに三本指で…。
どうすれば相手は倒れるか常に研究していく。
んーレベルが牛ですからね… そのくらいの気迫と破壊力がないとスポーツ空手になってしまう。ましてや型だけに終始していたのではダンスと変わりないという思想ですからね。
バットで叩かれてもビクともせず跳ね返す鋼鉄な肉体と盤石な精神はどのようにしてつくりあげるのか!いくつかのポイントに分けて書いていきます。
握力倍増法! 小指を強くしろ
直接打撃制( フルコンタクト )を採用している空手は、相手に直接当てて倒すだけの破壊力とパワーを備えていなければならないというところに格闘技としての意義がある。
そのために相手にダメージを与える部分の末梢部分を徹底的に鍛えます。
行動するときの筋力パワーは、体幹筋( 腹筋、背筋力etc )と 末梢筋( ジャンプ力、握力)に分かれ、その筋肉の毛細血管の発達によってパワーが発揮されていきます。
その毛細血管が密集し網羅されているのが末梢筋です。
空手の手技の破壊力を増すために一番力をつけなければいけないのは小指と薬指、および親指
だということで、懸垂や腕立て伏せ、逆立ちなど自分を重荷とした鍛錬をやっていく。
いずれも指だけで。
そして重要な部分は小指です。
「 小指1本で自分の体重を持ち上げられるくらいに鍛えよ!」
と喝破します。小指1本でぶら下がり、胸まで懸垂できるくらいになるまで。
これは実際に私もやってみましたがキツいです。最初は小指と薬指2本で鍛えてからの方がいいです。
しかし、5本指腕立て伏せを50回できれば5本指逆立ちをして1,2回逆立ち腕立てができます。私も実証づみです。これを3本指までもっていって小指1本懸垂ができるくらいになれば相当 末梢筋に力がついてきているといっていいでしょう。
裏筋肉倍加法
肉体が変形するくらい鍛錬しろ!
「 身体的な技術と力で勝負する世界で人並み以上に強くなる人の肉体は、部分的な変形が生じる。どこも変形しないような箱入りのお嬢さんみたいな体で、どうしてチャンピオンになれるのか!」
これは凄い、確かにそのために鍛え上げられた肉体には、それに適した変形ができると思う。空手家の拳タコやボクサーの皮下脂肪のない身体、相撲取りは相撲の、柔道家は柔道に適した体になっていきます。
「 巻き藁でもサンドバックでも手が変形するまで突き、足が変形するまで蹴ってみろ!」
というくらいの気迫で何千、何万回もの反復練習の証としての変形である。
そして、普段あまり使うことのない筋肉( 裏筋肉 )ほど強化していく。その種目の裏筋肉がどの部分の筋肉なのか ということを見極めていきましょう。
変幻自在の空手の型の練習などは、内側外側に捻りも加わり、片足でバランスよく蹴ったりして骨格筋の鍛錬強化に、とても効果があると感じます。
原始的ジャンプ力動法
大山総裁は「 これからの世界の空手は、パワー、スピード、ジャンプの空手へと変わっていく。日本の空手は従来のような技型式主義や直線的な動きを改めて、この3つの要素を体得していかない限り、いずれ世界の空手から引けをとるであろう。」と警告を提言していた。
これは自身がアメリカ武者修行や度重なる山籠もり修行で体感した本音であったと思います。白人たちからはそのパワーを、また黒人たちからはスピードとジャンプの凄まじさを思い知らされたと語っています。
特に黒人選手のジャンプ力は「 原始感覚 」ともいえるポテンシャルがあります。
それらに対抗するため「 原始感覚 」の回帰ともいえる山籠もりによる修行は凄まじいの一言に尽きます。
夜になれば灯り1つない中で孤独に耐え一心不乱に空手の鍛錬に打ち込むことは並大抵の気合いではできないことです。
しかも(山梨) 身延山中で1年、(千葉) 清澄山中で1年8ヶ月の長い期間の修行です。
そんな山中で森林の木々を相手として稽古していくうちに、跳躍力とジャンプのタイミングを動法として身につけたと言っています。それにはやはり肘と膝の屈伸力と腹筋、背筋の力が非常に大切だということです。
そこで始めたのが木登りだったと。 木登りは腕と脚の屈伸力、そして腹筋力、背筋力を鍛えなにより手足の指を強靭にしたと。
そしてもう1つ「 忍者 」の走り方、跳躍の仕方を試した。それは長い布をもって走り、その布が地面につかないような走り方や真横走り後ろ走り、片足走り、四つん這い走りなどを試みたところ、裏筋肉が発達し柔軟性が増した動きが可能になった。
様々な新しい発見をもたらしてくれたと言っています。んーこのような鍛錬を経て極真の飛び二段蹴りや飛び後ろ回転蹴りができたと納得です。
全身捻り強化法 バネの原理
パワーの源は捻りの力である。
捻るだけ捻って解き放つ( レリース )する、その直前に一呼吸置く「 溜め 」です。この溜めのあと一気にレリースしてこそ爆発的な瞬発力が出るという原理の基、捻るトレーニングを最大限にやっていきます。
「 点を中心とする円の動き 」の一環として円転力と旋回力を身につけよ!それは必ず全身を活性化する有効な手段となるでしょう。
余談になりますが、アメリカには「 バレリーナとは喧嘩するな 」という諺があるそうです。バレリーナは年中グルグル回ったり、跳び上がったりする練習ばかりやっているから動きがスピーディーになっている。しかも片足で立って全身を捻ったり曲げたりして鍛えているから強いぞ!ということでしょう。
確かに動きが空手に似てるような気がしますね。話を戻しますが…
この時の筋肉は筋力の収縮作用というより筋持久力の方が強い。溜めには全身の骨格筋だけではなく、それ以上に心肺( 呼吸器系 )の内臓筋の力を必要とします。
すなわち呼吸ですね。呼吸リズムによって調整がおこなわれるパワー操作なのだと。
空手には「 息吹 」という呼吸法があります。
自然体で立ち やや内股気味に閉じ、膝を柔軟にし重心を臍下丹田のあたりにおろす。両腕を弧を描きながら上の方に持ち上げながら、ゆっくり息を吸っていく。
額のあたりでXに交差させながら深く吸い込んだ息を丹田に力をこめ引き締めながら止息し極限まで溜めて耐える。
そして極限の一瞬、両腕を肘の方から下外側へ十文字を切りながら、喉の奥を開ききり「かぁー」と一気に丹田を振り絞って体内の息を全部吐ききる。
一泊おき残っている息を「かっ」と吐き放つ。
タレントの関根勤さんが、千葉真一さんの物まねでやっているような感じです。
丹田を中心にゆっくり吸って一気に吐く、陰と陽の呼吸法で調和を図り統一していくのです。この呼吸法を何回かやれば、どんなに激しい運動をやっても息は落ち着き、全身が新陳代謝されます。
まとめ
いかがだったでしょうか?ざっと書いてきましたが、要諦は単なる表面的な肉体改造、見せかけのボディビル的な筋肉づくりをやるのではなく、あくまでもより実践的でタフな肉体づくりを目指せ、ということではないでしょうか。
突き1つにとっても、それは小手先のテクニックではなく何万回も繰り返しやった成果として本当に威力のある技が身についていくものだということですね。
私は、何故ここまでの鍛錬と思想が生まれるのかと考えた時、スポーツと武道の違いを感じます。
現代スポーツは勝負の世界、勝った負けたの範疇です。が大山総裁が生きてこられた時代の武道は、まさに生きるか死ぬかの生死を賭けた世界であったからだと感じます。
戦争、戦後の混乱期で食糧もないとき、空手に全人生を捧げ超人追及をした その心意気を見習い、これから本当の実力をつけるために、頑張っていかなければと強く感じる次第です。
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