先日、MLBの公式ツイッターが公開した歴代の凄腕ナックボーラーたちの動画集を見ました。
まさに『 これぞ究極の魔球 』と言える数々のナックルボールは、驚愕の一語に尽きます。
通算318勝のフィル・ニークロをはじめ、ティム・ウェイクフィールド、現役ではRA・デッキィー、スティーブン・ライトといったメジャー最高峰のナックルボールは、ユラユラと揺れ浮き上がったと思ったら沈んでいく・・・予測不可能な軌道の球です。
風に揺られ、まるで蝶々のように変化を見せる魔球・・・
投げた本人も、どう変化するかわからない変化球。この魔球に魅せられた男たちを追ってみたいと思います。
目次
ナックルボールとは
ピッチャーの投げる変化球は、特殊な回転をボールに与えて曲がったり落ちたりさせるボールです。
カーブ、スライダーは手首を内側に捻りスピンをかけることによって、右投手なら外角へ逃げるような変化をします。比較的に投げやすい球種なので、ストレートに威力があるピッチャーが多投している傾向があります。
逆にシュートボールは、外側に回転を加えてスライダーとは反対に曲がっていく球種ですね。
そして今は高校生でも頻繫に投げるピッチャーがいますが、フォークボールは中指と人差し指にボールを挟んで抜くように投げることで球の回転数を少なくして落ちる球です。
すべてはボールに対して空気抵抗のなせる技なのですが、このナックルボールというボールは、リリースするときに指先でボールを弾き回転を与えないんです。
この無回転のボールが突き進んでいくと、縫い目が空気抵抗を受けてボールの後方にできる空気が、あらゆる方向に引っ張られるという原理で不規則に揺れながら落ちるという変化をもたらすのです。
まぁ、そんな原理はどうでもいいんですが、とにかく無回転の球で球速を120km/hも出せれば予測不可能な変化が起こります。
その変化は、人間の反射神経では捉えられないほどの変化なので、ナックルが魔球と言われる由縁でもあるんですね。
どんな変化をするのか? まずはイメージが大切です。
メジャーリーグ最高峰のナックルボーラーたちの投球を見てみましょう!
MLB公式が動画あげてたから載せとくわ
ナックルボーラー集です!
笑けるぐらいえぐいからみて!
pic.twitter.com/I6dGIRyfRY— 関西弁MLB情報 (@_MLBaccount__) December 12, 2018
これは凄い!
その昔、打撃の神様と言われた元読売巨人監督の川上哲治氏が現役時代、当時中日ドラゴンズのエース杉下茂の無回転フォークボールをキャッチャーが後逸するのを見て、そっと呟いたと言います。
『 キャッチャーが捕れない球を打てるわけがない!』と。ホンネですね。
こんな球を投げれたら凄いですね。
ナックルボーラーたちの経歴
メジャーで活躍するナックボーラーは、どんな経緯で魔球ナックルの使い手としてのポジションを築いたのか調べてみると、これが皆、以外と遅咲きなんですね。
30歳を超えてから勝ち星を増やしていった選手がほとんどです。若い時からいきなりブレイクした選手はいません。これはナックルボールが持つ球種が特殊で、完璧なボールを習得するのが困難なことを物語っています。
現在活躍しているRA・デッキィーは、テキサスレンジャーズにドラフト1位で入団するもマイナーとメジャーを行ったり来たりで苦難の末、球団から『 今までのピッチングでは、今後メジャーで使うことはないだろう。』と宣言されナックルボールに活路を求めます。
30歳のときです。自分の球速の限界を感じ、それでもメジャーで生き残るための最後の砦としてこの魔球に挑んでいくんですね。
またレッドソックスで活躍した、ナックルボーラーとして最後の200勝投手と言われたウエイク・フィールドは入団したときは内野手でした。やはり30歳以降で100勝以上を稼いでいます。
通算318勝の名手フィル・ニークロなど、その勝ち星の大半の287勝は晩年30歳を超えてからです。49歳まで現役でプレーしていますからね。うなずけます。
ナックルボーラーの特徴として、ピッチャーとしての寿命が長いことが挙げられます。30歳以降円熟味を増し、だいたい40代後半まで現役でプレーしています。球速としては平均100km/hから120km/hくらいの球で、腕を思いっきり振り切らない投球なので、パワーピッチャーに比べれば負担が少ないんですね。
でも難題はコントロールです。指先を立てる握り方のため、リリースが2本指の面でのスナップではなく、指先の点で押し出す投げ方が要因です。
でも… 投げてみたいですよね。
ナックルボールを投げるには
まず1番大事なのが球に回転を与えないこと。そしてある程度の威力が出せることが物凄い変化をもたらす条件です。でもこれが難しいーんですねぇ。しかもその球をストライクゾーンへ入れなければ自滅していくだけなのですから・・・
かくいう私も この魔球に魅せられて、クラブチームで投げていた20年余り、この球の習得に意気込んでいました。が…ついに自由自在に操ることはできませんでした。
回転は何とか抑えれるのですが、問題はやはりコントロール。決め球に使うには程遠い仕上りでした。たまに決まったとしても続きません。同じフォームで投げているつもりでも球に回転がかかってしまうことが頻繫におこりました。
物凄く微妙な感覚で違ってきてしまうのです。
無回転ボールが揺れながら落ちてストライクに決まったときは気持ちいいですよー!みんなビックリした顔しますね。Σ(゚Д゚)!
球が遅い分、キャッチャーミットに収まるまで、バッターが面食らってる動作とキャッチャーが必死に捕ろうとしているとこ、審判が目をグルグル回して見極めている・・・この三者三様の風景が第三者の目線で一瞬ですけど見えるときがあるんですね。
楽しいですよ。自分が投げた球なんだけど、どんな変化するかわからないし。ストレートで三振取るのとまた違った快感があります。
ナックルの名手たちからのアドバイス
メジャー歴代のナックルボーラーたちのアドバイスは投げ方などより、精神的な助言の方が多いんです。
『 最も大事なのは、全てをナックルに捧げることだ。カーブ、スライダーも忘れてナックル一筋だ。24時間考えるくらいでないとナックルボーラーにはなれない。』 フィル・ニークロ
なぜ、みんなナックルを投げないのか?の質問に通算216勝のチャーリー・ハフは『 非常に忍耐を要する球だからだ。その苦しみに耐えられないからだよ。』と答えている。
『 ナックルボールに必要なものは、禅の心だ。』 ウエイク・フィールド
サイヤング賞の現役デッキィーは『 他人が信じることを諦めても、自分の投げる球を信じる。』と頑張っている!
ナックルボールを投げるために必要なものは、強い指の力と諦めない精神力が必要不可欠のようだ。
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