近代野球において機動力( 足 )を使えるかどうかは、攻撃力の幅が広がり勝敗を決する大きなポイントになってきます。
それはそうですよね、1つのアウトも取られずにスコアリングポジションに進塁でき、相手にプレッシャーを与えることができるのですから。得点圏から有利な形で攻撃できます。
その機動力は、バッティングやピッチングと違い、常に使えるというメリットがあります。なぜなら足にはスランプがないから・・・
『 足がある。』というだけで相手バッテリーを警戒させ、内野守備のミスも誘いやすくなります。
そんな攻撃野球を可能にするのが 〃盗塁 〃です。
そこで今回は、盗塁のスペシャリストたちを参照にしながら盗塁を成功に導くコツを探ってみたいと思います。
目次
伝説の盗塁王たち
日本球界で盗塁のスペシャリストといえば、元阪急ブレーブスの福本豊選手( 1969~1988 )の右に出る選手はいないでしょう。前人未到の通算1065盗塁・シーズン最多盗塁106・13年連続の盗塁王獲得というとてつもない数字は今後、破られない記録だと思います。( 2020パ・リーグの盗塁王、周東選手の盗塁数は50。)
当時、宿敵巨人を倒して日本シリーズV3を達成した最強軍団、阪急ブレーブスの屈指のリードオフマンだった福本選手の足は、『 出塁すればノーヒットで1点取れる。』という今までの野球の常識を変えるものでした。
ノーアウト1塁は1つのアウトを犠牲にして手堅くバンドで送る野球から、積極果敢に二盗を試みノーアウト二塁から送り、犠牲フライや内野ゴロでも得点できるといった走る野球の醍醐味を確立しました。
https://twitter.com/mayuzumi1985/status/1309681478733709312?s=20
世界はメジャーリーグに目を向けて見ますと、これまた凄い怪物がいました。
リッキーヘンダーソン。メジャーリーグ史上最高の盗塁王です。( 1979~2003 )現役25年での通算盗塁数1406。シーズン最多盗塁130の記録保持者です。
シーズン130って・・・毎試合盗塁していなければ追いつけません。それだけの出塁率がなければ達成できない数字です。通算安打は3055本、めちゃくちゃバッティングもいいんですね。
前述した福本選手も通算2543安打で名球会入りしていますー。
リッキーヘンダーソンの盗塁場面の動画を見てみましょう!
全身バネのような凄い走法です!
このようなスピーディーなスチールを成功させるためには、どのようなポイントがあるのでしょうか?
盗塁を成功させるためのコツ
ご承知のとおり野球の盗塁というのは、『 よーいドン!』でスタートする訳ではありませんので、
足の速さとういのは余り関係ありません。
塁間27.431m、リードをとりますから約25mくらい向こうにあるベースに、いち早く辿り着けるかが
勝負になってきます。
そのため盗塁を成功させるために大切なポイントが3つあります。
スタート・スピード・スライディング です。
( 3Sと呼ばれるものです。)
- ピッチャーがホームに投げる動作をした瞬間、いかに速く
スタートをきれるか。 - いかに速くトップスピードに持っていけるか。
- スピードを落とさずにスライディングできるか。
が、カギになってきます。
特に大切なのが、スタート です。
ピッチャーがホームに投げるのか、牽制球か…
この見極めが全てと言っても過言ではありません。
1968年、当時100mの日本記録保持者( 10秒1 )でメキシコオリンピック日本代表の飯島秀雄氏が、
代走専門選手として東京オリオンズに入団し、そのとてつもない俊足を披露しましたが、3年間のシーズンで23盗塁・17盗塁刺に終わった現実があります。
やはり100m短距離と野球の盗塁では、その内容が全然違うのです。
そこで、この3Sやリードの取り方を稀代の盗塁王・福本豊氏と松井稼頭央氏が、そのコツを解説している動画がありますので、アップしておきます。
盗塁を成功に導くコツをまとめてみます。
- まずはリードです。
早く自分の出れる距離の( いつでも戻れる射程範囲内 )位置まで行って用意しておく。
大切なことは、自分のリズムに相手を引きずり込むこと。
自分のペースで牽制球を「 させる 」ということです。 - 次にスタートですね。
体を正面に切ってスタートするより、右に倒れるような形で足を動かせていく方が
速くスタートでき、トップスピードに持っていきやすい。 - 3歩目までにトップスピードに持っていく。
コツは1歩目、左足を踏み込むときに反対の右肘を上げてバランスをとる。 - そして最後にスライディング。
得意なスライディング1つあればいい。低い姿勢で横向きでスピードが落ちないように滑る。
足首を伸ばしていち早くベースにつくようにする。
スタートからスライディングまで、常に一定のスピードを保つことが重要 になってきます。
素早いスタートからトップスピードに持っていくまでは、日頃のダッシュ練習の時に心掛けてやって
いく必要があります。
盗塁成功の確率ををより不動のものにするために、もう一つ欠かせない秘訣があります。
伝説の盗塁王達は『 盗塁成功のカギは、いかに早くスタートがきれるかにかかっている。』ことを
熟知しています。
それを可能にするのが・・・ 目です。
盗塁を成功させる極意
『 ピッチャーがホームに投げるのか、牽制球か。』
この見極めができていれば、0コンマ何秒か早くスタートをきることができます。
このコンマ何秒の差が、アウトかセーフかを分けてしまう重要なポイントなんですね。
どんなピッチャーでも、どこかにクセがでる。
『 足が動く前に必ずどこか動く 』のです。
ホームに投げるのと牽制球との違いを、足を上げてからでは遅い、という意識でスタートをきる前に、
目で動作のクセを盗むのが究極の極意です。
それはちょっとした ”しぐさ” が違うだけなので、観察・研究が必要になってきます。
例えば、
グラブの位置・目線・
頭の振り向き加減・肩や踵の動き etc…
福本選手は、ユニフォームのシワにまで神経をとがらせ観察・研究したといいます。
投げる前に走れる準備が凄いです。
ここが一流の職人芸たる所以だと感じます。
まとめ
ここまで書いてきましたが、 ” 盗塁 ”というパフォーマンスは、足が速いだけでは到底なしえない
技術であり芸術ですね。
体力的な瞬発力やスピードの他に、クセを見抜く目、ピッチャーのテンポや雰囲気まで読む頭脳も
必要であり、総合的に1つでも欠ければ失敗に終わってしまう緻密なプレーだと言えるでしょう!
そして何より『 積極性と思いっきりの良さ 』が要求されるので、メンタリティーの強さが
必要不可欠です。
『 もしかしたら牽制…』とか思っていたらスタートきれなくなってしまいます。
『 よし、行こう!』と思ったら、すでに体が動いているくらいでちょうどいい感覚です。
積極果敢に挑戦していくマインドが欲しいですね。
好戦的という意味で、傲慢で自己中心的な部分が必要となってくると思います。
リッキー・ヘンダーソンが世界通算盗塁記録がかかっていた日に、『 失敗したら?』という
インタビューにこう答えました。
『 俺が失敗するようなことは、ありえない!』
まさにタフネスの象徴です。
こういう人が盗塁を成功させるんですね。。
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