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かつて火の玉投手の異名をとり、阪神タイガースの守護神として活躍してきた藤川球児投手( 40歳 )が、今季限りでの引退を表明した。
その全盛期の浮き上がるストレートは、『 狙っていても打てない…どころかバットにかすりもしない』という数々の強打者を唸らせた脅威の存在でした。
何かが違う・・・当時テレビでその投球を見ていても、ことごとくボールの下を空振りしているのが見て取れました。
球速はMAX156km/h程度、それでも早いのですが今の大谷翔平の165km/hと比べると引けを取ります。でもプロの並み居る強打者が打てない伝説のストレートはどのようにして誕生したのか。
その特異性のある球質の投げ方、秘訣を解明していきます。
目次
驚異の回転数( バックスピン )
藤川投手のストレートを一言で言ったら、凄い マグナス力 が働いている!ということです。
マグナス力って知っていますか? 逆スピン回転が多い物体が空中を進んでいくとき空気抵抗により、その進行方向より上に上がっていく力が発生する物理的現象のこと。
物体がマグナス効果によって、より浮き上っていくには2つの必要条件があります。
その1つが逆スピンの回転。
ピッチャーの投げたストレートにはバックスピンの回転がかかります。プロの速いピッチャーでも1秒間に37回転程ですが、藤川投手は、なんと45回転もしているんです。バッターとの距離18.44mの間でこの8回転の差が、とてつもない球のノビの違いになります。
バッターから見るとホームベース到達点で37回転の球より30cmも上にくるんです。それだけ球が落ちないんですね。これは脅威です。
そして2つ目が球の回転軸。この回転軸が地面に対して平行に近ければ近いほどマグナス力が強くなります。
この測定結果も普通30度くらいの傾きがあるのに対して、藤川投手の球はたったの5度しかなかったんです。限りなく地面と平行にバックスピンがかかっていいる。
正しい軸の方向で驚異的なバックスピンをかけることが、火の玉ストレートを投げる要因なのは間違いありません。この球を投げるのに1番大事なポイントは、やはりリリースの瞬間でしょう。
腕を正しく肩から肘→手首→指先と鞭のようにしならせて、最後に真上からボールをきる。回転数と回転軸、この2つを生み出す完璧なフォームが藤川投手のフォームなんですね。
でもそんな藤川投手でも入団以来すぐに投げれた訳ではありません。4,5年の間は試行錯誤し、挫折も何度も味わいました。一時は自由契約寸前にまで追いつめられた男が這い上がったのは・・・あるコーチのアドバイスでした。
コーチからの『 一言で 』で覚醒する
入団4年目で初勝利を挙げたのだが、その後は鳴かず飛ばずの日々が続きました。故障にも泣かされ活躍できない時期が続いていたとき、フォームの欠点を見抜いていたのが当時阪神の二軍投手コーチだった山口高志コーチでした。
その一言が『 右足ちゃうか?』でした。
要するに体重移動の際、後ろの軸である右足が折れすぎて力をロスしていたんですね。体重移動もスムーズにいかずリリースポイントも低くなっていました。
このフォームの修正に力を入れた結果、前足の軸へと移動がスムーズになったことで球を長く待てるようになり高い位置( 真上 )からボールをきれるようになりました。力がそのままボールに伝わっていきます。
元々潜在的な力を持っているピッチャーですので、水を得た魚のようにボールは唸りを上げ始めたのです。
さて、文章だけだとイメージが湧かないので実際の映像を見てみましょう!
凄いボールです。浮き上っているような感じがします。バッターから見たらとてつもない勢いがあるボールに見えるでしょう。
リリースする瞬間をスローで見ると、最後の最後までボールを持って押し込んでいるのがわかります。その粘りで手首が立ち、真上からのリリースを可能にしていますね。
ここまでの球持ちを長くさせるためには、腕だけの力では到底無理。足腰を含む体全体の強さが必要です。そのために藤川球児が率先的にやったトレーニングが・・・
体幹を鍛える( 体幹トレーニング )
藤川投手がブレイクした2005年当時、体幹トレーニングというのは、まだ一般的には余り盛んではありませんでした。当時のインタビューで『 球速アップの秘訣は?』の質問に『 フォームの修正と体幹トレーニングに力を入れた。』みたいなことを答えていたので、その体幹トレーニングってどんなトレーニングなんだろう?と調べた記憶があります。
体幹とは胴体部分のことで、体を支えている深層部にある筋肉( インナーマッスル )を主に鍛えるトレーニングです。器具を使わずにヨガとはまた違った体勢をつくり、筋肉に負荷をかけたまま耐えるんですが、これが思ったよりキツかったのを思い出します。
あとバランスボールを使ったトレーニングも取り入れ、不安定な体勢の状況でバランスを保ちながら筋力を鍛えていきました。
そんなトレーニングの成果が、体の中心軸をブラさずに最後のリリースまで持っていける要因なんですね。
まとめ
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最後に藤川球児という火の玉投手の異名を取るピッチャーを語るうえで、メンタル部分の強さを強調しておきたいと思います。
リリースする瞬間『 浮き上がれ!いってくれ!』のイメージのもと渾身の力を込めているのがわかります。
自分の真っ直ぐに生命を賭けている『 ピッチャーの意気込み 』みたいなものを感じます。プロの強打者が狙っていても当たらないストレートは、もう魔球の域に達しているボールですね。
火の玉ストレート藤川球児。滅多に現れないピッチャーでした。
お疲れ様でした。
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