サイドスローとは、投手がボールをリリースする腕の位置が地面と平行になる投球方法です。
横から投げる投法なのですが、豪快に振り下ろして投げるオーバースローやスリークォーターに比べると球威がなく、コントロールと横の揺さぶりでかわすピッチングが多いという印象がありますが、プロ野球歴代のピッチャーの中には『 えげつないボール 』を投げ、凄い記録を打ち立てた強者サイドスローピッチャーが多数います。
今回は、サイドスローピッチャーに焦点を当て、そのメリット・デメリット、投げ方のコツなどを
『 本格派サイドハンド 』や『 凄い変化球 』を操った球史に残る名サイドスローピッチャー達を参考にしながら検証していきます。
目次
サイドスローの威力
子供にボールを投げさせると、ほとんど最初は上から投げます。それは人間、上から下へ力を加える方が投げやすいし力も入るからです。
歴代のサイドハンドピッチャーも野球を始めた当初は、オーバースローで投げていたのがほとんどです。しかし腰や肩の回転が上手くいかずコントロールが定まらなったり、体重移動がスムーズにできないなどの理由でサイドに転向したケースが多いのです。
人それぞれ骨格や筋肉のつき方が違いますから、『 サイドハンドスローの体の使い方が合っている 。』という投手もいるでしょう。
ここでサイドスロー投法のメリットとデメリットを考えてみたいと思います。
サイドスローのメリット
- バックスイングからフォワードスイングに移行する際、少し前のめりになって移動していく特有の動きですので体重移動がスムーズにいきやすい。
- 真横からリリースするので横の変化球( スライダー・シュートなど )が投げやすい。
などが挙げられるでしょう。特に同じ対向バッター( 右投手vs右バッター・左投手vs左バッター )のアウトコースには角度のあるボールになるため打ちにくいでしょう。
サイドスローのデメリット
- 上手投げよりスピード球威が出しずらい。
- 逆の対向バッター( 右投手vs左バッター・左投手vs右バッター )には腕の出どころが見えやすくなる。
このようなデメリットを克服するためには、横回転の腰のキレと強靭なスナップ力が必要になってきます。
さて、ここからは球史に名を残した歴代の名投手達を私の独断と偏見でタイプ別に選んでみたいと思います。
シュート系サイドスローピッチャー
現在54歳の私が最初に興味を持ったのが、小学生の時に見ていた巨人→阪神の小林繫投手でした。
そのフォームが独特で、よく物まねをしてキャッチボールをしたものですが、足を上げてから沈み込み一旦止まるんですね。そこからバックスイングに入るのですが、今のルールでは完璧に二段モーションでアウトです。
オールドファンならご存知でしょうが、これがその豪快かつ華麗なフォームです。↓↓↓
178cm・60kg台の細身な体格と甘いマスクに似合わず、サイドからのシュートでグイグイ攻めていくピッチングが心情でした。
1973~1978年 巨人在籍5年間で76年・77年と連続18勝を挙げエース格として活躍していたのですが、78年 江川投手との『 空白の一日事件 』で阪神に電撃トレードされます。
江川投手の代わりに巨人を出された形になったのですが、そこからが小林投手の真骨頂、移籍した79年22勝で最多勝利、古巣巨人には負けなしの8連勝を挙げ男の意地を見せました。
全身から繰り出す渾身の投球は見る人を魅了しました。
そして、昭和のサイドハンドで忘れられないのが、1979~1997年・巨人→西武で主にストッパーとして 通算755登板した鹿取義隆投手です。
特に王監督率いる巨人時代の85年~87年登板数は、85年60・86年59・87年63と2試合に1回は登板している 計算でそのタフネスぶりは『 香取大明神 』と呼ばれるほどの信頼感でした。
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私も一時期サイドハンドから投げていた経験があるのですが、上下のぶれないオーソドックスな横回転からの フォームは、非常に参考になりました。鹿取投手はシュートばかりではなくスライダーの切れも抜群で横の変化球でバッターを翻弄していましたね。
サイドハンドからのシュート系ピッチャーのフォームというのは、前述した小林投手も共通するのですが後ろ軸足( 膝 )にグッと溜めてから前肩の開きを極限まで耐え、そこから一気に横回転でリリースまで持っていく。
まさにシュートがキレるフォームです。
魔球シンカーを操ったサイドスローピッチャー
シンカーというのは、シュートしながら落ちる超難しい変化球です。
サイドハンドからのシンカーというと、真っ先に思い浮かぶのが1991年~2007年 ヤクルトスワローズ・MLBホワイトソックスの守護神に君臨した高津臣吾投手です。
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『 150km/hの腕の振りで100km/hのシンカーを投げれないか。』と当時ヤクルト監督の野村氏から言われシンカー習得に取り組みます。しかし、凄い要求をするものですねプロの監督は。それだけの資質を見抜いての期待感だと思いますが。
サイドハンドから1度浮き上がってから沈むシンカーの投げ方のコツは・・・
『 手の甲を真上に向けて引っかく。』
『 リリースは小指の外側から出てくるイメージ。』
『 腕のスイングは時計の11時から5時の方向に捻る。』
といった表現をしていて、何となくわかるような気がしますが、こればかりは感覚の問題ですから自分でつかむしかありませんね。
そんな高津投手がシンカー習得に際して参考にしたピッチャーが、西武一筋( 1990年-2004年 )中継ぎや抑えで活躍した潮崎哲也投手です。
潮崎投手のシンカーの特徴は、その落差がフォークボールのようでした。こんな感じです。↓↓↓
“シンカー”を投げる投手と言えば第1に潮崎哲也、次に高津臣吾(リアルタイムで現役時代を知る選手だと)。
動画は1992年日本シリーズでシンカーを投じる潮崎。その変化に杉浦享や野村監督も驚いている?#球辞苑 pic.twitter.com/7uBftixBLZ— Larry Spencer (@wildrunner_2510) February 15, 2021
このシュートしながら50cmは落ちているであろうシンカーの秘訣は握りにありました。
普通のシンカーは、中指と人差し指で利き腕側の斜め下にスピンをかけるのですが、潮崎投手は中指と薬指の間にフォークボールのように挟んで抜きながらスピンをかけていました。
この特殊な投法で驚異的な落差を生み出していたのです。まさにウルトラC級の技ですね!
平成の大エース
昭和60年代から現在にかけて安定感・記録的に見ても、この人の右に出るサイドスローピッチャーはいないでしょう。
それがジャイアンツ不動のエース( 1984年~2001 年・通算180勝 )だった斎藤雅樹投手です。
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2年連続20勝や11連続完投勝利は、今後破られない記録だと思います。
球種としてはシュート系は余り投げていなかったように思いますが、ほとんど145km/hのストレートと『 二度曲がる 』と言われた切れ味鋭いカーブ・・・やスラーブというのか、今でいうカットボールで圧倒的にバッターを翻弄していましたね。
まさに本格派のサイドスローピッチャーでした。
サイドスロー最速は?
サイドで1番速かったのは誰か? 気になるところですが、最速ピッチャーは文句なし 韓国・三星ライオンズ→ヤクルトで活躍した林昌勇( イム・チャンヨン )投手ですね。
その最速なんと160km/h!を記録。
サイドハンドはリリースポイントが、オーバースローやスリークォーターより低い位置から出てくるため、同じ球速ならばバッターの感じる体感速度はより一層速く感じるはずです。横からの160km/hはとてつもなく速く感じるでしょう。
バネのある下半身と強靭なスナップの強さから繰り出される『 蛇直球 』と称されたストレートで三振の山を築きました。
自分もサイドスローってのも
あるけど林昌勇の投球フォームが一番好きだわ pic.twitter.com/RT2jurFikQ— Naoto (@Naoto8100) May 23, 2018
やっぱり速いっすね!肘の使い方が柔らかくて独特です。
林昌勇投手で印象に残るのは、やはり第二回ワールド・ベースボール・クラシック 日本代表との決勝10回表でのイチロー選手との真っ向勝負ですね。
センター前に決勝打を打たれてしまいますが、アスリート同士の力と力がぶつかった凄い勝負でした。
後日、『 敬遠のサインを無視して挑んで打たれた。』と非国民扱いされ非難を浴びましたが、これは首脳陣の思惑が原因でしたので林昌勇投手はアスリートとして正々堂々と勝負しただけです。
あの場面で渾身のストレートを打ち返したイチロー選手が凄いのであって、そのストレート全球は素晴らしいボールでした。
ここまでNPLでの最強サイドスローを挙げてきましたが、更に海の向こうメジャーリーグに目を向けてみますと、とんでもない本格派サイドスローピッチャーがいました!
メジャーリーグ 本格派サイドスローピッチャー
それがクリーブランド・インディアンスのニック・サンドリン投手です。
180cm・79kgのメジャーでは小柄な体格ながらバネにきいた変則モーションから繰り出されるスライダー・シュートは絶品です。
動画でその投球を見てみましょう!
凄い球ですね!Σ(゚Д゚) 球も速いし変化球の曲りが大きいですね。これだけのキレがあるとバッターは途中までストレートに見えてそこから急に消えたように感じるでしょう!
内角か外角か的を絞っていかないと捉えるのは難しいと思いますね。
こういった速球派に共通している点は、前述した斎藤雅樹投手や林昌勇投手もそうですが、リリースポイントはサイドからでもスナップの瞬間では手首が立って出てくるんですね。ボールに力が加わります。
そしてもう1人忘れてはならないのが、メジャー300勝ピッチャー、ランディ・ジョンソン。
左のサイドスローなのですが、もう体のサイズが桁外れです。身長208cm。手足の長い規格外のサイズから繰り出されるスライダーは、左バッターにとって背中の後ろ、すぐそこから曲がってくるように感じたでしょう!
#今日は何の日 #誕生日
ランディ・ジョンソン
(Randall David Johnson)
1963年9月10日生まれ
元アメリカ大リーグ投手
アメリカメジャーリーグ歴代2位の通算4875奪三振を記録した。
身長2m8cm
球速最速102mph(約164km/h)@retoro_mode pic.twitter.com/zv3ZmxAT3o— セイジ (@seijithanks) September 9, 2021
40歳での完全試合達成やノーランライアンに次ぐメジャー歴代の2位の4875奪三振は納得です。
まとめ
いかがだったでしょうか? どんなフォームでも正しいエネルギー出力をしていれば、ストレートでも変化球でも威力のあるボールは投げれるということです。
要は自分に合った投げ方を身に付けることが重要です。何か運動をする時には、他の人を凌駕するエネルギー量を出せるかが問題で、常識を超越してもそれをリカバーできる人の方が優れていくんですね。
オーバースローやスリークォーターで投げて『 どうもぎこちない感じがする。』という人はサイドスローに挑戦してみるのも1つの手です。投げ方を変えて開花したというピッチャーも少なくはありません。
ここで紹介したサイドスローピッチャーを参考にして、やってみたら横回転の体の使い方が合っているかもしれませんから。。
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